親愛なる祖母へ
朝の5時前…ケータイの着うたがやかましく鳴った。
誰だよこんな時間に、と珍しく起きていた私。
最近夢見が悪くて、寝るのが怖い。
だから眠くなるまで寝ない。
ぼぉっとするアタマでしばしチカチカ光るケータイを眺め、電話の相手が母親であることを認識した私は慌てて電話に出た。
…祖母が危篤!?
一昨日は重体で、見舞いに行って、峠を越えて、一安心して…。
…安心する暇なんかなかったね。
上の弟と一緒にバタバタと家を出て、車に乗って…。
一般道路はやや渋滞気味。
高速トバして…結構早く着いた。
緊急用の入り口から入って…エレベーターで11階まで上がって、ドアが…開かない。
内側から看護士さんに開けてもらわないと入れないらしい。
ガラス越しに親族達の姿が見えた。
空気が、重かった。
悟ってしまった。
遅かったのだと。
今身体を洗浄してるからもう少し待ってねと言われた。
OKが出てから病室へ。
ドラマと同じように、白い布に顔を覆われた小さな体。
布を取ると、まるで人形。
実感などない。
ここにあるのは抜け殻だ。
狭い密室に祖母と二人きりになっても実感出来なかった。
「まだ温かいよ」と言われ、そっと手を触れる。
…ダメだよ、私の体温が高すぎるよ。
まだ行くのは早すぎるじゃないか…。
泣く間もなく、大人達はあれこれしなくてはならない。
私達は邪魔にならぬよう、祖母を見送ってから帰ることにした。
弟と二人、車の中やファミレスの中でとりとめのない話をした。
「死んだら魂はどこにいくのかな?」
私はおどけて少しSFチックな返答をした。
「…まぁ、最終的には天に還るってのもあながち嘘じゃないんじゃないかな?」
安らかに眠れ
永遠の時の中で